ヴィニェードス ベルティカーレス

山岳急斜面で樹齢100年以上のブドウ樹から作られる奇跡のワイン

 スペイン・コスタデルソルの中心都市マラガ。そのマラガの海岸線を東に走っていくと、急斜面の山々が現れます。海岸線からこの急斜面を車で登っていくと、アクサルキア地区自然保護地域に入ります。そのアクサルキア地区のモクリネホ村にビニェードス ベルティカーレスはあります。このボデガは、90年も前からマラガ酒と言われるフォーティーフェイド ワイン作りをしてきたボデガ A.ムニョス カブレラの4代目のホセと、その親友でロンダの複数のワイナリーでエノログとして腕を振るうヴィセンテが新たなスティルワインを作りを目指し設立したものです。

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ロンダでは、19世紀末にフィロキセラの襲撃によりブドウ畑は全滅してしまいましたが、ここアクサルキアでは、奇跡的に生き残ったブドウ畑が点在しています。樹齢100年以上のブドウの樹がここでは毎年ブドウを実らせています。

この奇跡的なブドウ畑をホセが案内してくれました。「この辺では、樹齢100年以上のブドウ畑と並んで、50年、35年、8年と色々な年齢のブドウ畑があるんだ。自分達で所有するブドウ畑は3ヘクタールしかないけど、僕達と同じように何代にも渡ってここでブドウ作りをしている農家が点在している。そういうブドウ農家と契約を結んで、年間36ヘクタールの畑からブドウを買い付けしている。僕達のやり方でブドウを育ててもうらう為に、組合が買い上げる2倍の価格で僕達はブドウを買っているんだ。質の高い、ワインに向いたブドウを作ってもらわなければいけないからね」。

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畑に到着すると、そこには我々が見慣れたブドウ畑とはまったく違う光景が広がっていました。うねるような、まったく乾き切った岩山岳の急斜面にへばりつくようにブドウの樹が植えられています。いえ、植えられているというよりも、殆ど自生に近い状態のブドウが何百本も生えているという感じです。「古い畑と、比較的若い畑を見分けるのは簡単なんだ。きちんと列をなして生えている畑は、比較的最近植えられたブドウ畑で、一方、不規則に自生している様に見える畑は古い畑で、まあ、35年以上前の畑という事になる」。そういわれて良く見ていると、確かに急斜面ながらも綺麗に列をなしている畑と、そうではなく、てんでんばらばらにブドウが生えている畑がある事に気づきます。

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「でも、こんな山の急斜面で、どうやって耕したり、ブドウを収穫したりするの?」と聞くと「全ては、人間と馬の肉体労働。トラクターすらこの急斜面には入れないからね。人間と馬が急斜面で土地を耕し、樹からブドウを収穫して、小さなカゴに入れて、そのカゴを馬が背にしょって集積場所まで運ぶ。その繰り返しで収穫するんだ」。アクサルキアのブドウの収穫時期はヨーロッパで一番早く、7月から始まる事で有名。この辺の夏は暑いではなく、とにかく熱い。直射日光の下では45度を超える事も多い。人間にとっても、馬にとっても超重労働だ。

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何で、こんな場所でブドウ作りが始まったのか?その答えは、この山の地質を見ればすぐにわかる。フェライト上のシェールが何十・何百という層をなして山を覆っていて、更に、急斜面である事から水分はすぐに流れ、吸収されてしまう。ブドウの根は、水分を求めて、この岩を砕いて根を伸ばす。そして、山の下に見渡せる地中海から吹き上げる風でブドウの木は乾き、カビや、病気になる可能性も低減される。当然、日夜の寒暖差も大きい。ここで数世紀、いや、数十世紀にも渡りブドウ作りが行われてきた理由が説明を聞かなくても目の前に広がる光景を見るだけでわかる。ここで行われているブドウ農法は、フェニキア人(フェニキア人は、紀元前10世紀に海を渡りこのアンダルシアのカディスに上陸したと言われている)時代から続く農法だと言われています。ある意味地上で残る一番原始的なブドウ栽培法ですが、一方では、本物の自然のブドウがここで育っているとも言えます。ブドウの農法だけではなく、ここで主要種として育てられているモスカテル デ アレハンドリアは、ギリシャのサモス島が原産地で、エジプトのアレキサンドリアを経由して、数千年前にヨーロッパに渡ったと言われています。現存するブドウ種の中でも交配等がされずに残っている古代のブドウ種とも言われています。古代の耕法で育てらる、古代から伝わるブドウ。それを伝承しつづけてきた人達がここにはいます。

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「マラガの伝統的なフォーティーフェイドワイン以外に、何故スティルワイン作りを始めたの?」と聞くと、ヴィセンテが「ここのブドウは、今までマラガ酒用に、収穫の後、日干しされて、レーズンを作り、糖分を凝縮して、甘口のワインが作られてきたんだけど、実際には、糖分と酸味がすごくバランスしたブドウが採れるんだ。それを使って、美味しいワインを作ってみたくなったんだ。そして、ホセと意気投合して、マラガでスティルワインを作る事になった。他にはない、特徴のある美味しいワインをつくりたくなったんだ」と。

そうして作られたのが、ここで紹介する2種類のワインです。

一つは、ラ ラスパというモスカテル75%、現地種のドラディーリャ25%のワインです。このワインには、樹齢30-50年の畑で収穫されたブドウが使われています。収穫後別々に発酵をさせ、発酵が終わったワインを澱引きをせずに、通常甘口ワインを作る時に使われるコンクリートタンク内で、5ヵ月シュールリー熟成させています。モスカテル特有の強い香りは抑えられていて、花、アニスの香りがし、ミネラル感があり、フレッシュ感があるワインです。

もう一つは、フィリタス イ ルティータスという、モスカテル90%に、ペドロヒメネスをを10%加えたワインです。ペドロヒメネスが、スティルワインに使われるのは極めて珍しい事です。このワインには、樹齢100年と40年の畑のブドウが使われています。収穫後、一昼夜マセレーションし、モスカテルは、100年間ブランディ熟成用に使われてきた大樽で発酵させ、ペドロヒメネスは、フランスオーク樽で発酵。発酵終了後に、ブレンドされ、澱引きせずに、10か月間シュールリー熟成されます。香りは複雑で、ほんのりとしたフルーツとならび、ほのかなブランディを思わせる香り。口に含むと、オイリーで、気持ち良い酸味と、ミネラル感が調和します。一度、気にいるとやみつきになるワインだと思います。他では味わえないワインです。

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ビニェードス ベルティカーレスというのは、「垂直ブドウ畑」という意味です。このネーミングは、これらのワインの生い立ちそのものを意味しています。是非お試しください。